新しい憲法をつくる沖縄県民の集い

  
 『憲法改正と地域主権について』

沖縄県民の集い

慶野義雄先生
 平成国際大学法学部教授

日時:平成26年5月3日(土・祝)
    
会場:「カルチャーリゾート・フェストーネ」
    (沖縄県宜野湾市真志喜3-28-1)
主催:自主憲法制定沖縄県民会議

講演要旨

 さて、『憲法改正と地域主権について』というテーマをいただきましたが、地域主権を論じる前に、「主権」とは何か?をまず検討してみましょう。その起こりは、16世紀のフランスにジャン・ボーダンという思想家がいて、『国家論』という書物を出して、そこで、「国家と主権」とは不可分な絶対的なものであるとした。というのは、ボーダンの時代は、ヨーロッパは絶対王政の時代で、その絶対王政を正当化するために、ボーダンが「主権」という言葉を考えた、ともいえます。つまり、ボーダンは、王制と主権とは一体不可分なもの、と考えたのです。
 しかし、その後、ヨーロッパでは、その王政・王国が何世紀にもわたって戦争を繰り返し、その悲劇から、専制王政を制約するために、君主と人民との契約で「憲法」を創って、行政権のほかに、国民の代表たる議会を創って立法権を付与し、また司法権、つまり紛争を合法的に裁き客観的に罪人に罪刑を課する裁判所を創った。しかし、国際社会が形成されていく内に、その国のトップは誰かを決めなくてはならない。主権とは、そうゆう経過を辿って生まれたものであります。つまり、「主権」とは、16世紀にフランスのジャン・ボーダンが言うように、独立国家と主権とは一体不可分なもので、「主権は、国家の属性である」、「主権は、独立国家にのみ伴うものである」というべきです。
 それでは、ここで、いま、政界でのはやり言葉である「地域主権」について考えてみましょう。わが国で、いつごろから「地域主権」という言葉が出てきたか、調べてみると2000年頃からのようです。そのはしりは、政治学者で思想史家である丸山真男東大教授が『大衆社会論』などの本を書いて、天皇制批判などの著書で、地域民主主義を強調した。
 それらに影響されたせいか、松下電器系列の出版社PHPの編集長を経て「みんなの党」から出馬して当選した江口克彦参議院議員が『地域主権型道州制』という本を出版して、注目を浴び、また、京大で私の後輩筋にあたる民主党の前原誠司さんも、江口さんと共同編集ですが『日本を元気にする地域主権』という本を書いている。
 こうして、いまの政治家は、保守系の人の中にも、「地域主権」とか「市民社会」とか「道州制」とかいうと、選挙区住民のうけがよい、選挙に有利に働くと思うらしく、盛んに使いたがる。特に左翼報道なども、使いたがる。沖縄県下においても、「地域主権」という言葉が宣伝されているようですが、「地域主権」なんていう言葉に従うことは、結局、その地域の独立に繋がってゆく。沖縄県においても、それは沖縄の独立に繋がってゆく、ということを、みなさん、どうか御認識いただきたい。なぜなら、上述したように、法律的・政治的に、「主権は、国家の属性」だからです。

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