憲法改正手続につき、日本国憲法と米独仏伊憲法との比較と問題点
── 安倍晋三総理の第96条改正意向を踏まえて ──
講話日:平成25年3月19日(火) 東裕(ひがしゆたか)先生 苫小牧駒澤大学国際文化学部教授・憲法学会理事 |
講演要旨
現行憲法第96条(改正手続要件)では、衆・参「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が発議(国民へ提案)し、国民投票の過半数の賛成で」成立するという、極めて改正手続きが厳しい(硬性)憲法なため、日本では一回も改正できないでいる。先進諸外国ではどうか? (1)アメリカは、上下両院の三分の二の賛成と四分の三の州での憲法会議の承認。(2)ドイツは、各議院の三分の二の賛成。(3)フランスは各議院の過半数の賛成。(4)イタリアは、各議院の過半数の賛成後、3ヶ月以上経過後に再び各議院の過半数の賛成、としている。(1)と(2)は、三分の二は日本と同じだが、国民投票を要しない。(3)と(4)は、過半数の賛成で可決される。私見としては、日本も(3)(4)と同じく、議員の過半数で良いと考える。けだし、衆参各議院の総議員の三分の一の少数派議員の反対で、65年間も、憲法改正が出来ず、主権者たる国民の意思表示すら行使できないのは不合理だからだ。日本の周辺環境が劇的に変化している中で、国家の主権を維持し、国民の生命・財産を守り、国際社会への貢献を果たすためにも、第96条の厳格な改正要件を緩める必要がある。ただ、改正手続だけの改正を言うと、国民が他の条項をどう改正するか不安に思うので、第9条をはじめ、主要な箇所をどう改正するのかも、明らかにすることが望ましい。