分かりやすい憲法改正学へのすすめ その12
  ──「第6章 司法」(裁判所・憲法裁判所問題)──

清原淳平会長

講話日:平成28年1月22日(金)

清原淳平会長

講演要旨

 現行憲法第6章は「司法」との題が付いているが、当団体第3次案では、「裁判所」とした。その理由は、古くからの憲法学では、立法・行政・司法の三権分立をもって国家の三機能としたので、それに倣い「司法」としたものと思われるが、一般人には「法を司る」と読めるので、そうなると、警察官や公務員も法を司ると言えるし、国会議員も法を作るのだから入るのではないか、と誤解されるので、当団体案では、その実質的機能を捉え、ドイツと同様、「裁判所」と題名を変えたことが、説明された。
 現行憲法第76条2項は「特別裁判所は、これを設置することができない。」とするが、例えば、海上での船舶の衝突事故などは、国際条約を含め特別の判断が必要で、一般の裁判所では難しい。そのため、現在の「海難審判所」は行政庁たる国土交通省の特別機関として置かれていることなどから、この条文は廃止して、行政裁判所を認めるべきだとした。同じく第79条は、最高裁判所の裁判官の任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付すると規定し、実際に行われてきたが、これまで、国民によって罷免された裁判官は一人もない。このために、最高裁判所判事一覧表や投票用紙の印刷など大きな費用を要しているので、こうした無駄を省くべく、この条項は廃止すべきである。
 その他、現行憲法の「司法」の章は、第76条から第82条まで7カ条にわたるが、その条項のほとんどに改正すべき問題があることを、清原会長から、具体的な指摘とともに、当団体の改正案が説明された。 さらに、清原会長は、「違憲立法審査権」に触れ、過去に、日本国内の米軍基地問題、あるいは自衛隊の基地について、それを違憲だとする訴訟が提起された。「砂川判決」では、最高裁は違憲ではなく合憲だと判決した。また、北海道恵庭町の自衛隊演習地に関して、近くの酪農家から、自衛隊を憲法第9条違反だとする主張がなされた件、同夕張郡長沼町に配備された高高度迎撃用地対空ミサイル基地を憲法違反とする訴訟、また茨城県百里基地の存在を憲法違反だとする訴訟において、第一審、第二審、あるいは最高裁判所の判断が分かれた例が説明され、そうしたことから、こうした合憲か違憲かの判断については、ドイツのように「憲法裁判所」を新設すべきだとして、当団体のその条文が説明された。

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