国家なき自治体の基本条例の実態とその理論

八木秀次先生

講話日:平成23年9月28日(水)

八木秀次先生

高崎経済大学教授

講演要旨

 自治体基本条例は「まちの憲法」をつくるという名目で全国182の自治体で制定されているが、中には「憲法解釈や法令の解釈ができる」「国の政府から独立した地方固有の政府」なる文言が入っている実例があり、国家転覆に繋がる極めて危険な思想が流れている。その理論の主柱となっているのは松下圭一氏の「自治体基本条例」構想である。それは、「住民自治」を中心に据えた自治体基本条例を制定し、「市民主権」の精神に則り、「市民」が参加する地方政府を創設するという構想である。憲法第94条には「条例の制定は法律の範囲内」とあるが、先述したようにこの基本条例では法律の解釈もできるかのような文言が盛り込まれている。憲法>法律>条例という法体系に反する明らかな違憲である。また、市民が議会や政策決定に参与するのかも含め、彼らの意志が国政をも拘束するのであれば、国家統治の破壊につながる。こうした条例は一見すると前文に「歴史の文化の尊重」等の耳触りの良い文言を挿入し、反対しづらい空気を醸成することから始まる。皆様の自治体でこのような条例の動きがでたら反対運動を起こしていただくと同時に、地方議員も「自治体基本条例」の実態について認識していただきたい。

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