自民党の憲法改正案検討状況について

保利耕輔先生

講話日:平成23年9月28日(水)

保利耕輔先生

衆議院議員、
自民党憲法改正推進本部長、
元文部大臣・ 自治大臣、
元法務委員長、元自民党政調会長・国対委員長

講演要旨

 自民党結党50年を機に、平成17年に自民党新憲法草案が作られたが、来年4月28日にサンフランシスコ講和条約締結60周年を迎えるのを機に、加筆した草案を同日発表する予定である。なお、「新憲法制定」という言葉を一時使用していたが、「制定」では現憲法の破棄か革命による制定という意味にとれるので、「憲法改正推進本部」という名称にした。今の憲法は時代に合わない様々な問題点がある。まず、前文は日本が大東亜戦争の敗者であるという視点から書かれた文言である。また「平和を愛する諸国民の公正と信義に…」は、をでなければ日本語としておかしい文言である。ふさわしい内容を検討している。天皇条項について、天皇が元首というのは当たり前のことだが、外国から見ると元首が誰なのかわかりづらい文言となっている。国事行為に内閣の助言と承認が必要という規定は内閣の方が天皇より上位に位置しているかのような規定である。国旗・国家に関する規定も、法律レベルでなく憲法に書くべき事項である。第9条は、昨今の尖閣・北方・竹島問題が起きている今、時代にそぐわない条項といえよう。自衛権は国家の自然権であり、外敵からの侵略に対して反撃できないかのような文言は明らかにおかしい。一院制か二院制かについては議論が分かれている。一院制は行政の効率化というメリットがあり、「一致すれば不要、一致しなければ妨げ」というシエイエスの主張ももっともだが、個人的には二院制を支持しており、衆議院で可決した法案を参議院で再度議論しなおすのは負担だが、慎重な審議というメリットもある。ただし、その場合にも選挙制度改革は不可欠だ。地方主権という言葉が盛んに使われているが、小さな自治体が主権を持つことが果たしてできるか。国家の形づくりという視点が抜けている。第96条の改正条項のみを改正する案を提出しようとする動きがあるようだが、肝心な憲法の全体像をどうするのかという視点が欠けている。論議を抜きにして考えるべきではない。非常事態条項がないことが今回の大震災の復興の遅れにつながっているとみられるが、非常事態は災害に限った話ではない。いかに簡単な文言で条項を入れるかが問題となる。憲法改正は自民党結党の精神であるが、憲法に関する会合を開いても議員の出席率がよくない。当時の岸総理はじめ結党当時の憲法改正に熱心だった諸氏の精神を思い起こし、活発な議論の下に改正案作りに取り組むと共に、一日も早い憲法審査会の開催を与党には求めたい。

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