議院内閣制と首相のリーダーシップ
講話日:平成23年7月25日(月) 慶野義雄先生
平成国際大学教授、 |
講演要旨
議院内閣制とは内閣を議会の信任の上に立たせる制度である。議会と内閣の間に長期的対立が起きることは、本来ないはずである。大統領制と違い、厳格な三権分立を採っていないため、大統領制よりリーダーシップを発揮しやすいシステムであるはずだった。しかし、元来名目上は君主、実質的には議会に対して責任を負っていた議院内閣制が、君主の権力が弱まっていく中で、議院内閣制もその機能低下を招いて行った。日本においては、議院内閣制を採っていながら大統領制のアメリカを模倣した憲法によって、政治的混乱がしばしば起きる状況となっている。アメリカの大統領にリーダーシップがあるように見えるのは、世界一の軍事力を背景に、国家非常事態下では、議会の権限を縮小してリーダーシップを発揮できるような条件が作られているからである。日本でも、総理以外の閣僚は、総理に任免権があるという強大な権限を握っているが、これを私物化し、派閥の均衡、連立政権においては党利党略の道具として使われるようになり、国家より派閥、という事態を招いた。「政治主導」という言葉が一人歩きして、「ある程度の独裁を認める」などという首相の発言があったが、政治家が責任を取ってこその政治主導であって、危機管理は専門家に任せて、首相が責任を取るのが本筋である。政治家がリーダーシップを取りたいのであれば、憲法に危機管理規定を設けることが先である。「地域主権」や「新しい公共」という言葉が使われているが、これは公共の対象を、国際機関、国家、地域に3分化することを目的とした、マルクス主義の理論である。