国際常識を踏まえた憲法解釈の必要性
講話日:平成29年11月17日(金) 吉原恒雄先生 拓殖大学元教授・時事通信元海外部次長 |
講演要旨
社会学の祖・スペンサーは、憲法は諸国の歴史・習慣から成立しているので、外国の憲法を翻訳してはならないと述べている。成文憲法は、尊厳的部分と、権力規定部分からなり、尊厳部分は歴史・伝統を踏まえた価値観をベースとしなければならない。例えば、アメリカの憲法は修正を繰り返して雑然としたものに見えるが、自前の尊厳部分については手を付けることはない。整然と美辞麗句が並んでいる憲法は新興国のものである。日本国憲法は、日本の歴史・習慣が入っていない点で、日本に適していないといえる。また、護憲派がよく「世界唯一の平和憲法」というが、平和主義条項は120カ国以上にある。また、防衛機能のない国家は一人前の国家とは言えない。自衛権というのは、憲法に書くまでもない、国家として当然の権利である。だから、自衛隊違憲論や、集団的自衛権はあっても行使できないという解釈は誤っている。国連憲章にも、国際武力紛争法の遵守が義務付けられており、自国の成文憲法で否定しているからと言って自衛権が行使できないということはできない。9条はただの理想にすぎない。非常事態法制は民主国家にこそ不可欠である。危機的状況が起きる可能性とその対策を法の支配と調和させることを怠ってはならない。帝国憲法も不磨の大典視された結果、非常事態規定が整備されていた米英に敗れた。非常事態規定があったにもかかわらず、沖縄戦では戒厳令が発令されなかった。法の硬直化は亡国の道である。