国民投票を成功させるために!
講話日:平成29年12月14日(木) 浅野和生先生 法学博士、平成国際大学法学部教授 |
講演要旨
現在の日本周辺諸国の国際情勢を鑑みると、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」や「政治道徳の法則は普遍的なもの」という文言が虚構であることがよくわかる。また、9条への自衛隊明記、緊急事態条項など、憲法改正の必要性は明らかだ。憲法改正は喫緊の課題ではあるが、第1回目の改正については、自民党だけでなく、各党が合意できるような内容であり、かつ国民が必要性を理解しやすいように、論点を絞ることが望ましい。そして、細部にわたる議論は国民投票に書けるまでに終えておかなければならない。そういう意味で、前文の改正や章立ての変更は第1回では難しいといえる。通常選挙と同時に行うと、政争の具に供されるおそれがあり、論点が多すぎると国民は混乱してしまう。台湾でも憲法改正国民投票が3回行われたことがあるが、国民が十分に理解でき、皆が賛成できるような内容だったにもかかわらず、政党間の対立が持ち込まれたのが原因で不成立になった。世論は昔と比べると護憲一色というわけではなく、改憲が50%近くを占めている状態が続いているが、国会では依然として「議論が熟していない」という意見が多く聞かれる。国民の意識と国会内の論議にかい離が生じていると考える。9条に自衛隊の存在を明記する案について、9条の2を創設する説、3項を設ける説などいろいろと唱えられているが、3項を置く説に立つと、自衛隊違憲論を認めてしまう結果になるので、この説には立てない。憲法改正は失敗してはならない。成功すれば、次の改正の見通しも立つ。そのためには、改憲連立内閣を組むくらいの決断力が必要だ。